ぶたの本棚

本の感想を中心に好きなものについて書こうと思います。よろしくお願いします。

10代の神様-辻村深月先生を語る-

中学生の頃。 辻村深月先生の作品を、私は他の誰にも好きだと言って欲しくありませんでした。

大好きで大好きで、彼女の物語が私のためだけに書かれたものであれば良いのにと思っていました。 

 おかしな話ですよね。

自分から、彼女の作品を何度も友達に紹介していたくせに、そんな行動とは裏腹に、独り占めしたくて仕方がなかったのです。

 

 こんにちは、やのぶた🐷です。

今回は予告通り、私が敬愛する小説家、辻村深月先生を紹介します。

 

「ツナグ」が映画化され、「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞し、とても有名になった辻村深月先生。

私が彼女の作品をはじめて読んだのは、中学生の時でした。

あの衝撃を、今でも忘れることができません。

中学生という多感な時期。私はコミュ症と対人恐怖症と人見知りを拗らせて(まぁ、今もですが😅)、あまり友人のいない寂しい子供でした。

そんな私の素晴らしい理解者となったのが、辻村深月先生の作品でした。

人間関係がまるで隣にあるかのようにリアルで、登場人物1人1人の気持ちが痛いくらい分かる。

これが、辻村先生作品の最大の魅力だと思います。

この人はこんなにも私のことを理解して、沢山の素敵な言葉を送ってくれている。この人の作品は、私のためにかかれたのではないか。私のためにあるのではないか。

年頃の女の子にそう思わせるのが、すごく上手いのです。

辻村先生の作品が好きだ、よく分かると言われることは同時に、私の心を覗かれているような気分に陥ることを意味していました。

誰かに私のことをもっと理解してほしい、でもそんなに簡単に分かるよとは言われたくない。私はそんなに単純な人間ではない。

好きだよと言われたい、でもあまりにも軽く言われると、貴方に何が分かるのと言いたくなってしまう。

そんな気持ちの葛藤がそのまま、辻村先生の作品を独占したい、誰にも好きと言って欲しくないという思いにつながっていたのですね。

今から思うと気持ち悪くすら思うほど、私は彼女の作品にのめり込んでいました。 

 

辻村深月先生は、直木賞を受賞したときのインタビューで、「自分のために書かれた本だと勘違いして読んでもらえたら嬉しいです」的なこと(正確ではありませんすみません)を語っています。
つまり先生は、意図してそういう物語を書いている。勘違いすることを許してくれている。
それを知ったとき、凄い小説家さんだと思うと同時に、滅茶苦茶嬉しかったです。一生忘れられない一言だと思います。

 

辻村先生の作品の魅力は、それだけではありません。

多くの作品がリンクしていて、思いがけないところで成長した登場人物に出会えること。

巧妙に張られた伏線によって引き起こされる、二重三重のどんでん返し。

これらも、彼女の作品の特徴であり、魅力です。

 

辻村深月先生の作品の中に、「スロウハイツの神様」という作品があります。この物語の中に、「十代の神様」という言葉がでてきます。

子どもの頃に酷く夢中になり、その人の人生に確かに影響を与えているけれど、ある時がくるとその興奮がふっと冷めてしまう。そんな作品のことを、十代の神様と呼んでいるのです。

私にとっての辻村深月先生は、きっと十代の神様なんだと思います。

今でももちろん、彼女の作品が大好きです。でも、時が経つにつれて、かつてのような興奮を覚えることは減りました。

辻村深月先生の作品の魅力自体は、これっぽっちも衰えていません。新作の「かがみの孤城」、素晴らしかったです。

だからこれは、私自身の問題なのだと思います。辻村深月先生は私の十代の神様で、私はそろそろ、その時期を抜けるんだろうな、と。

彼女の作品を読み返す度に、寂しいなぁと思うのです。

  

なんだかまとまりのない文章になってしまいましたね、申し訳ありません。

最後に、個人的に好きな辻村先生の作品Best5を、好きな台詞と一緒に載せて終わろうと思います。

 

スロウハイツの神様

「自分の言った言葉っていうのは、全部自分に返ってくる。返ってきて、未来の自分を縛る。声は、呪いになるんだよ」

 

・ぼくのメジャースプーン

「人間って、絶対に他人のために泣いたりできないんだって。」

「自分のために一生懸命になってくれる誰かがいること。自分が誰かにとってのかけがえのない人間であることを思い出すことでしか、馬鹿にされて傷ついた心は修復しない」

 

・オーダーメイド殺人クラブ

「これからは余生だ」

 

・凍りのくじら

「そして、その光を私は浴びたことがある。誰も信じないかもしれないが、もう何年も前、私はそれに照らしてもらったことがあるのだ。同じ光を世界に届けたいから、私は写真を撮っている。」

 

・子どもたちは夜と遊ぶ

「君が生きているというそれだけで、人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が、この世の中のどこかにいるんだよ。不幸にならないで。 」

 

ではでは、辻村深月先生の作品、是非読んでみて下さい🙏🏻

また来週。やのぶた🐷でした。

 

参考:講談社 出版  辻村深月

        ぼくのメジャースプーン

       オーダーメイド殺人クラブ

       凍りのくじら

       スロウハイツの神様

       子どもたちは夜と遊ぶ    etc