復讐は正義になれるのか?-「ぼくのメジャースプーン」-
想像してみて下さい。
もしも、貴方にとってすごく大切な人が理不尽に傷つけられたとして。
貴方にだけ犯人に復讐をする力があるとしたら。
貴方は復讐をしますか?
こんにちは、やのぶた🐷です。
今回は、大好きな本を紹介します。
タイトルは、「ぼくのメジャースプーン」。
私が敬愛する辻村深月先生の作品から、万人受けしそうでかつ私がとても好きな作品をセレクトしました。
可愛いタイトルですが、食べ物🐷の話ではありません。シリアスな内容になっています。はじめに、簡単にあらすじを説明します。
この物語の主人公は、小学生の男の子。彼には幼馴染の女の子、ふみちゃんがいます。
ふみちゃんは、主人公にとっては「友達だけどちょっと憧れ」な魅力的な女の子ですが、一般的にはそうではありません。頭が良く、真面目で冴えない大人しい女の子で、友達もあまりいません。
そんなふみちゃんは、学校のうさぎに餌をやることが他の何よりも楽しいのだと主人公に寂しげに笑いかけます。
ある日、ふみちゃんが何よりも大切にしていたうさぎがとても残酷な方法で殺され、ふみちゃんはその悲惨な光景を誰よりも最初に見つけてしまいます。
さらに、ふみちゃんがうさぎを見つける様子は犯人によって盗撮され、インターネット上で拡散されてしまいます。
その結果ふみちゃんは、ネット上で容姿をひどく批判されます。
そして、大好きなうさぎの死体をみせられ、よく知らないたくさんの人の罵声を聴いたふみちゃんは、事件の後遺症でPTSDになり、声が出なくなってしまうのです。
しかし、事件の犯人に与えられた罪は器物損害。
うさぎを殺し、ふみちゃんの心を壊した罪は、窓ガラスを割ったのと同じ重さ。
そう考えた主人公は、納得することができない。
そんな主人公には、少し不思議な力があります。彼は、誰に対してでもたった一度だけ、自分の言うことをきかせることができるのです。
色々あって、主人公は犯人と会う機会を得ます。
力を使えるチャンスは、そのたった一回だけ。
犯人に与えられる罰は、たった一つだけ。
どんな罰を与えるのが正しいのか?何もしないのが正しいのか?復讐は正しいのか、正しくないのか。
正義ってなんだろう、罪ってなんだろう、罰ってなんだろう。
一週間、主人公は秋山さんという大学教授と一緒に、これらの大人にも難しい問いを考え続けます。
最後に彼が出した答えとは何なのか、ふみちゃんは声を取り戻すことができるのか、犯人にはどんな裁きが下されるのか。
......と、いうような話です。簡単にとかいいつつ長くなりましたね。ごめんなさい。
ここまで読んでくれた貴方、凄い忍耐力だと思います、うん。せっかくここまで読んでくれたのだから、ほら、あと少しお付き合い下さい🙏🏻
この物語の魅力は、力という非現実的な要素を使っていながら、ひどくリアルな物語であるところにあります。
ネットの使い方を間違えた人による心ない誹謗中傷、軽い気持ちで生き物を殺してしまう犯人。この現代で、いかにも実際に起こりそうな事件ですよね。
事件を通して描かれる人間関係や主人公の葛藤も、まるで彼らが隣で生きているかのようにリアルで、共感せずにはいられません。
リアルであるから、この物語を読んだ貴方は多分、沢山のことを考えると思います。世の中の理不尽とか、どうにもならない壁とか、復讐の是非とか、そういったことについて。
辻村先生が用意した結末は、とても衝撃的なものです。
この物語を読み始めたら、必ず最後まで読んで下さい。最後まで読みきらなければこの物語の魅力は分かりません。飛ばし読みもダメです。
主人公がふみちゃんをどんなに大切に思っていたのか、秋山教授はどんな大人なのか、ふみちゃんがどんなに素敵な女の子なのか。
丁寧に描写されているからこそ、最後のシーンが心に響きます。かったるく思うかもしれませんが、ちゃんと読んで下さい。
辻村先生の作品全般の魅力でもある少しのどんでん返しが、とても効果的に使われています。
何度読み返しても泣いてしまう。そんな素晴らしいシーンに出会えるでしょう。
(私はもう数え切れないくらい泣いています🙏🏻)
私にとって辻村先生はとても特別な作家さんです。敬愛しています。
今の私があるのは、彼女の本に出会ったからだと言っても過言ではないと思っています。
そんな彼女の作品達の魅力について話始めると、とてもとても長くなるので、今回はこのくらいにしておきます。
また、来週か再来週あたりに書くかもです。
ではでは、最後までお付き合い下さりありがとうございました🙏🏻🙏🏻🙏🏻
ぼくのメジャースプーン、是非読んで下さい。感想を語り合いましょう!
また来週(たぶん)。やのぶたでした。🐷
参考: 「ぼくのメジャースプーン」 辻村深月 著 講談社 発行